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第7回 開催記録

第7回現代経済政策研究会議  概要


テーマ:グローバル・インバランスと金融危機
開催日:平成21年(2009)年2月21日(土)~22日(日)
会 場:関西経済連合会会議室(大阪市北区中之島6-2-27 中之島センタービル29階)
主 催:現代経済政策研究会議
後 援:(財)関西社会経済研究所*

オーガナイザー:  橘木俊詔(同志社大学経済学部教授、京都大学名誉教授)、
          本多佑三(大阪大学大学院経済学研究科教授)、
          三野和雄(大阪大学大学院経済学研究科教授)
プログラム委員長:岩壷健太郎(神戸大学大学院経済学研究科准教授)

会議のテーマの趣旨:
 現代経済政策研究会議は、これまで日本経済の直面する金融問題や雇用、社会保障の問題、経済構造問題、さらには日本を取り巻く世界経済の問題や電気通信の問題について議論してきました。今回は、国際金融の分野で今、非常にホットなテーマであるグローバル・インバランスと金融危機を取り上げ、活発な研究報告と討議を行います。
 アメリカのサブプライム問題に端を発する金融危機は、世界各国の金融市場を混乱に陥れ、現在、世界経済は急速な景気の落ち込みを経験しています。その直接的な原因として、サブプライム問題や証券化が注目されがちですが、アメリカの住宅バブル形成の背景には国際的な経常収支不均衡の拡大があり、アジア諸国や産油国からの持続的な資本移動が米国の資産価格の高騰と旺盛な消費を可能にしていました。そこで、今回の会議では、第一日目にグローバル・インバランスの問題、第二日目にはサブプライム問題と金融危機に関する問題を議論します。
(オーガナイザー・プログラム委員長による助成申請書より抜粋)


出席者:22名  (50音順、敬称略。所属は平成21年(2009)年2月21日現在)
  Ruben Lamdany (国際通貨基金(IMF)独立評価機関(IEO)アシスタントディレクター)
  阿部 茂行   (同志社大学政策学部教授)
  岩壷 健太郎  (神戸大学大学院経済学研究科准教授)
  江阪 太郎   (神戸市外国語大学国際関係学科准教授)
  小川 英治   (一橋大学大学院商学研究科長・教授)
  北野 重人   (神戸大学経済経営研究所准教授)
  金京 拓司   (神戸大学大学院経済学研究科教授)
  高阪  章   (大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)
  地主 敏樹   (神戸大学大学院経済学研究科教授)
  進藤 久佳   (野村證券金融工学研究センターシニアアナリスト)
  高木 信二   (大阪大学大学院経済学研究科教授)
  橘木 俊詔   (同志社大学経済学部教授、京都大学名誉教授)
  永易  淳   (筑波大学大学院システム情報工学研究科准教授)
  深尾 光洋   (慶應義塾大学商学部教授、(社)日本経済研究センター理事長)
  福田 慎一   (東京大学大学院経済学研究科教授)
  藤井 英次   (筑波大学大学院システム情報工学研究科教授)
  藤田 誠一   (神戸大学大学院経済学研究科教授)
  本多 佑三   (大阪大学大学院経済学研究科教授)
  松林 洋一   (神戸大学大学院経済学研究科教授)
  三野 和雄   (大阪大学大学院経済学研究科教授)
  宮尾 龍蔵   (神戸大学経済経営研究所長・教授)
  吉田 裕司   (九州産業大学経済学部教授)

      *本事業は、財団法人関西社会経済研究所の、平成20年度研究支援事業として実施された。


プログラム ・ 報告概要
                                            (参加者敬称略)

平成21年2月21日(土曜日) ※言語:日本語


第1セッション  “グローバル・インバランス”    
                                座長: 高阪 章(大阪大学)

報告  13:10-14:10 “Structural and Cyclical Movements of the Current Account in the US: 1976-2007”
              松林 洋一(神戸大学)

                本研究では、米国の経常収支を構造的な部分、循環的な部分、その他の部
               分に分解し、構造的部分の要因分解や均衡為替レートに関する検証を行った。
               90年代の終わりの構造的部分はGDPの3%ほどに達し、これはほぼ貯蓄の
               低下と住宅投資の増加に起因している。2007年以降のサブプライム問題は住
               宅投資の落ち込みと消費の低下を招くため、経常収支赤字は今後、減少する
               可能性が高いことがシミュレーションで明らかになった。

               討論者:宮尾 龍蔵(神戸大学)


報告  14:10-15:10 “Macroeconomic Impacts of Foreign Exchange Reserve Accumulation”
              福田 慎一(東京大学)

                近年の外貨準備の増加は中国に限らず、多くの発展途上国でみられる。本
               研究では、外貨準備の増加のマクロ的影響を理論的に分析し、その理論的含
               意を実証分析した。外貨準備が増加すると、負債総額が増加するが満期は短く
               なる。外貨準備の金利が低いならば、外貨準備の増加は恒常的な消費の低下
               を招くが、投資と経済成長率の上昇をもたらす。ペン・ワールド・テーブルのパネ
               ル・データを用いて実証分析したところ、これらの理論的含意が支持された。

               討論者:北野 重人(神戸大学)


                                座長: 阿部 茂行(同志社大学)

報告  15:30-16:30 “A Note on the Debate over Renminbi Undervaluation”
              藤井 英次(筑波大学)
 

                中国の人民元はグローバル・インバランスに関連して盛んに議論されている
               が、人民元がどれくらい過小評価されているかについてコンセンサスがあると
               はいえない。本研究では、人民元の過小評価問題の既存研究をふりかえりな
               がら、最近の世界銀行のデータ改定や系列相関が点推定に及ぼす影響につい
               て分析した。価格とGDPを使ったバラッサ・サミュエルソン効果をもとにした推計
               結果は、世界銀行のデータ改定の影響を強く受け、最新のデータを使うと人民
               元の過小評価はほぼないという結果になる。しかし、これはデータやモデルに
               よって結果が変わりえるということを示唆しており、人民元の評価は慎重になら
               なければならない。

               討論者:吉田 裕司(九州産業大学)


報告  16:30-17:30 “External Adjustments and Coordinated Exchange Rate Policy in Asia”
              小川 英治(一橋大学)

                グローバル・インバランスの原因をアジアの貯蓄超過に求める議論では、そ
               の解決策として人民元の切り上げを求める向きがあるが、この原因としての貯
               蓄超過と解決策としての人民元切り上げは理論的に整合的ではない。本研究
               では、アジアの経常収支黒字の原因が貯蓄超過にあるのか、通貨安にあるの
               かをVARモデルを用いて検証したところ、中国は貯蓄超過が原因であり、他の
               アジア諸国は通貨安が原因であった。したがって、中国の人民元の切り上げが
               経常収支黒字を削減する可能性はそれほど高くない。それどころか、他のアジ
               アの通貨の相対的価値を低めることによって、アジア全体の経常収支黒字は
               増加する可能性があることを追加検証によって明らかにし、アジアの経常収支
               黒字を減少させるためにはアジア内での通貨調整が必要であることを示した。

               討論者:永易 淳(筑波大学)


平成21年2月22日(日曜日) ※言語:英語


第2セッション “サブプライム問題と金融危機”
                               座長: 本多 佑三(大阪大学)
報告  9:30- 10:20  “Aspects of IMF Corporate Governance Including the Role of
the Executive Board”
              Ruben Lamdany(IMF)

                本研究では、今回の危機を契機にIMFのガバナンス改革(統治改革)が必要
               になっている背景とその評価を行った。IMFが今回の金融危機を事前に予測
               し、警告することができなかった背景には、金融分析を経済監視活動に十分に
               取り入れられていないこと、米国が金融セクター評価プログラムに参加していな
               いこと、大国に対する委縮効果などがある。IMFガバナンスの評価としては実
               効性、効率性において評価できるものの、説明責任を確保する十分なメカニズ
               ムがないことや少数意見が必ずしも反映されているとはいえないなど、説明責
               任と発言権の面で課題が残されていることが明らかになった。

              討論者:高木 信二(大阪大学)


報告 10:45- 12:45 “アメリカ発の金融危機と金融監督の行方”
             深尾 光洋(慶應義塾大学、日本経済研究センター)

                本報告では,サブプライム問題の顕在化から今日の金融危機まで事実の整
               理をした後、危機の原因を①住宅価格の上昇、②投資銀行の資本不足、③リ
               ーマン破綻の政策ミス、④AIGの連鎖破綻の面から説明した。さらに、CDS(ク
               レジット・デリバティブ・スワップ)の抱えるリスクと付随する問題点について指摘
               した。金融市場の質を向上させるためには金融監督の強化措置をとることが必
               要であり、そのための具体的な政策提言を行った。


           “Subprime Loan Problem”
              進藤 久佳(野村証券)

                本報告では、まず、金融危機の根本的な原因であるサブプライム・ローンの
               状況、これを組み入れたABS CDOの仕組み、格付けパフォーマンスを解説し
               た。次に、2008年に入って急速に注目を浴びるようになったCDS市場の仕組み
               や、具体的な被害状況を大手証券会社の例を用いて説明し、メディアが伝
               えていた誤解について指摘した。さらに、金融業界が取り組んでいるCDS市場
               の改善案について解説した。

              討論者:地主 敏樹(神戸大学)、岩壷 健太郎(神戸大学)



【報告資料】 StructuralandCyclicalMovementsoftheCurrentAccountintheU.S.:1976-2007 (神戸大学 松林洋一氏)


【報告資料】 MacroeconomicImpactsofForeignExchangeReserveAccumulation (東京大学 福田慎一)


【報告資料】 ANoteontheDebateoverRenminbiUndervaluation (筑波大学 藤井英次氏) 


【報告資料】 ExternalAdjustmentsandCoordinatedExchangeRatePolicyinAsia (一橋大学 小川英治氏)


【報告資料】 アメリカ発の金融危機と金融監督の行方 (慶應義塾大学、日本経済研究センター 深尾光洋氏)


【報告資料】 SubprimeLoanProblem (野村證券金融工学研究センター 進藤久佳氏)

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