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  1. PEO(太平洋経済展望)
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その他の活動

日本ベトナム経済フォーラムin Osaka‐戦略的パートナーとしての日越の未来を考える‐

 当研究所は、国際交流事業の一環として、「在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館」及び「日本ベトナム経済フォーラム」主催の標記会合の後援団体の一つとなるとともに、開催支援をした。
 開催概要と各発言者の発言要旨は以下の通りである。

◆日 時:2009年10月29日(木)14:00~17:30 
◆会 場:リーガロイヤルホテル大阪 2階「菊の間」
◆実施プログラム:
主催者挨拶:在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館 総領事レー・ドゥク・リュウ氏
大阪府知事からのメッセージ紹介

Ⅰ.特別講演:日本電産株式会社 代表取締役社長  永守 重信氏

Ⅱ.パネルディスカッション
  <キーノート・スピーチ> 
  日本外務省 南部アジア部長  猪俣 弘司氏
  ベトナム外務省 総合経済局長  ブー・クァン・ミン氏
  ベトナム商工会議所 国際部長  トラン・チェン・クォン氏
<パネリスト>      
 パナソニック株式会社 代表取締役専務  大月 均氏
 Vietnam-Japan Business Forum 理事長、Kinhbac City Group 会長、
 Saigon Invest Group 会長  ダーン・チャン・タム氏
 APEC経済委員会 議長  大守 隆氏
 早稲田大学 教授  トラン・ヴァン・トゥ氏
<コーディネーター>
  社団法人日本経済研究センター 特別顧問   小島 明氏

ご挨拶:特命全権大使(関西担当)  田邊 隆一氏
閉会挨拶:日本ベトナム経済フォーラム 会長、
 東京電力株式会社 顧問、元社長  南 直哉氏
司 会: 日本ベトナム経済フォーラム世話人代表    本間 正明氏

◆主 催:在大阪ベトナム社会主義共和国総領事館、日本ベトナム経済フォーラム
◆後 援:日本国外務省、ベトナム社会主義共和国外務省、近畿経済産業局、堺市、
     日本貿易振興機構(ジェトロ)大阪本部、(財)関西社会経済研究所、
     近畿大学世界経済研究所、(財)学生サポートセンター、
     (社)日本ベトナム経済交流センター、特定非営利活動法人日越関西友好協会 
◆協 力:(社)関西経済連合会、(社)関西経済同友会、大阪商工会議所、
     関西日越協会
◆言 語:越→日 逐次通訳

Ⅰ.特別講演  日本電産株式会社 代表取締役社長  永守 重信氏
<進出の経緯>
 最初にベトナムに進出したのは1995年、まだベトナムへの関心はあまり高くない時期だった。賃貸工場で操業していたが、インフラ、政府の協力、労働力のいずれの面でも良くなく、ベトナム進出は時期尚早かと思った。
1997年に正式に工場をつくったが、本格的に「いい国だ」と思ったのは、当時サイゴンの共産党の書記で、今国家主席になっておられるチェットさんに出会ってからである。進出するにあたっての問題点を伝えると、迅速にそれに対応、解決していただけるようになった。最初の頃の悪い印象は全部消え、グループ会社が次々と進出していくこととなった。中国に進出した際もそうであったが、熱意のある政府や関係機関の人との人間関係が大変重要だと思う。
<グローバル戦略>
 日本電産の基本的なグローバル戦略は、第一に「メイド・イン・マーケット」である。
人件費が安いとか、為替レートではなく、マーケットのあるところに工場をつくり、そこから物を運ぶ、という展開をしている。アジア各国の一覧表を作り、人件費・為替・インフラ等を点数化していくと、大体どこの国も100点満点で70~75点とあまり大差はない。人件費の安いところはインフラが悪い、インフラがよくなると人材レベルも上がって人件費も上がる、これが当たり前である。
第二にカントリー・リスクへの対応であるが、リスク分散のために国を跨いで各製品の生産を振り分けていく。1つの国での各製品の生産量はマックスで30%としている。
第三は雇用の拡大で、投資の金額もさることながら、働きたい人の多いところへ工場をもっていくのが一番の社会貢献と考えて、雇用の拡大を重要なポイントに考えている。
<ベトナムでの課題>
 インフラは港湾も含めてまだまだ弱い。国内マーケットという面でも、将来を見越して工場展開しているが、現状はタイや中国への部品供給基地である。
また、税制も一貫性がなく、人によって判断が変わるところがある。税制や工場に関する法整備が必要である。
人材については、マネジメント層のローカル化をしたいが、人材が非常に不足である。育成には2~3年はかかるので規模の拡大にローカル化が追いつかない。これについては、日本での研修費用を政府が一部負担する制度も考えられないか。そうすると、より多くの人材を教育でき、双方によい相乗効果を生むのではないか。
<今後の展開>
 日本電産は、中国では4万人規模、タイでも3万5千人規模で展開しており、それらと比べるとベトナムの規模は決して大きくない。
今後、ベトナムの拠点を大幅に増強し、サイゴンのハイテクパークを一大工業にする。異なる製品をつくるグループ企業全てが同じ工業団地に入り切磋琢磨すると利点が多い。繁閑時の人材の移動もやり易い。現在この団地には5つのグループ企業が入り、順次増強している。また、出張者、長期滞在者等日本人が多いので、日本食を食べられるホテル等も整備したい。
ベトナムを、アジア地区全体の戦略基地に位置付けて拡大を図っている最中である。一番望むのは、ベトナムで最終製品までつくり上げ、将来ベトナムがマーケットになり、30年も50年も根付いていく関係である。そして、我々が持ち込んだ技術でベトナムのエンジニアが新しい会社を興し、それでもっと国が栄えることを期待している。
わが社は今後3年間でみて最大の投資、当初予定で10億ドルの投資を更にする予定である。日本電産コパルは12月着工で工場を新設、その次はベトナム日本電産を増築し、2012年には3万人規模にする計画である。ベトナム政府のサポートを受けながら、投資を拡大していきたい。  以上



1. キーノート・スピーチ
①日本外務省 南部アジア部長  猪俣 弘司氏(パワーポイント資料はこちら)
<日本・メコン交流>
 今年は日メコン交流年であり、近く日本で日本・メコン地域諸国首脳会議がる。
メコン諸国(ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ)は、日本に友好的であり、(資料P15の通り)南部経済回廊と東西経済回廊がうまくつながれば物流面でも効果は大きく、この地域間格差の是正も含め、地域全体の発展を目指して交流に取り組んでいる。
<日越のパートナーシップ>
 パートナーシップとは1つ目は政治的な信頼関係。特に国家のトップレベルの交流は大切である。
2つ目は経済関係強化。今年10月1日に日越経済連携協定が発効した。3つ目は、国民の相互理解。特に若い人の交流が大切であり、政府としても交流強化に取り組みたい。
<ベトナム経済について>
 ベトナムの成長率は、08年は6.2%、今年は、第1四半期の成長率は下がったが、金融緩和政策や80億ドルの景気刺激策(その後65億ドルに縮小)で第2四半期から回復基調になっており、安定している。ただ、景気刺激策が財政を圧迫する可能性があるので、日本政府は緊急財政支援借款で約5億ドルを供与することを決めた。ベトナムへの投資については、我々の統計では累積投資の実行ベースで1位になっている。昨年は製油所関係の建設案件が投資額で大きな割合を占めた多い。
<日越共同イニシアティブ>
 2003年から官民合同でベトナム投資環境整備のための「日越共同イニシアティブ」を実施している。
それぞれの問題点としては、例えば電気料金の二重価格制廃止や観光・商用短期滞在ビザの免除等、第1フェーズでは44項目、第2フェーズでは46項目が提起されているが、いずれも達成されており、現在は第3フェーズに入っている。
<新たな協力分野>
 新たな協力対象となる産業分野として原子力がある。これを民生に使うことで協力できればいいが、政府間の取決めが必要となる。宇宙開発事業については、関係機関間での協力は進んでおり、衛星調達問題で少し滞っていたが次段階について検討中である。「ホアラック・ハイテクパーク」についは、今後具体化していく。
経済協力の重点分野は、ⅰ経済成長促進・国際競争力強化、ⅱ生活・社会面での基礎社会サービス向上、ⅲ環境保全、ⅳガバナンス強化の法整備である。
日本は越に対する最大の援助国であり、日本の進出企業にも裨益できればよいと思う。また、企業からの情報提供もお願いしたい。
 
②ベトナム外務省 総合経済局長  ブー・クァン・ミン氏
 ベトナムと日本の関係は、現在あらゆる側面でかつてない高いレベルに達している。数か月前には越日の「戦略的パートナーに関する共同宣言」が発表された。ベトナムにとって日本は、最大の貿易相手国であり、最大のODA提供国である。世界経済危機の渦中でも、2009年度ベトナム向け15億USドルのODAが決定された。これは過去最高額である。
今後の両国の相互信頼を促進するために以下のことが必要と考える。
第一は、世界・地域の平和や安全にとって重要なテーマを議論、政策決定する時に協調することである。ASEAN+3、ASEAN+6、APEC、WTO、国連等の国際会議での統一見解や協調的言動が望まれる。
国際法を尊重し、問題の平和的手段での解決を望む日本の姿勢をもっと高く評価する必要がある。
国連安全保障理事会で常任理事国を目指す日本をベトナムは強く支持する。また、メコン地域に対する日本の積極的協力を高く評価する。地震、台風、温暖化、疫病等の非伝統的課題の解決に日本の一層の協力が求められる。
両国指導者の日常的交流が大切である。皇太子殿下の訪越のようにベトナム一般国民は皇室の訪問も望んでいる。
第二は総合的な経済協力の強化である。越・日EPA協定はベトナムでは初の全面的協定である。ベトナムは、中小企業、特に裾野産業、ハイテク産業、原子力産業、航空宇宙産業の分野の進出・協力を必要としている。
第三は、限られた資源を有効に使うため、優先的な導入を必要とする協力分野を策定することである。科学、工業に関する協定を両国政府で結ぶ必要がある。
第四番目としては、世界的な経済環境の変化の中でも持続的成長を図るため、両国の研究成果、またデータ交換などにもっと注力する必要がある。
日本ベトナム経済フォーラムの役割は、政治・経済・成長戦略・新しい経済管理方式に関する研究・検討に加え、ベトナムへの日本の企業経営者や研究者の意見・要望を正確・迅速に伝えることも期待されている。

③ベトナム商工会議所 国際部長  トラン・チェン・クォン氏
 ベトナムの人口は近く1億を超え、1人当たりの収入も急速に拡大し、ASEANにおける大きな市場となる。太平洋に面する東アジアでは、日本、韓国、中国沿岸部を経てベトナムに至る南北軸の経済圏、メコン流域のミャンマー、タイ、ラオス、ベトナム中部の港にいたる東西経済回廊が形成され、ベトナムは双方の交わる地である。
ベトナムは、日本の協力を得て、企業従業員の能力水準を高め、先進技術を導入して商品の付加
価値を高めたい。また、単なる技術の物まねでなく、ベトナムの実情や特徴、市場の動向に合わせて調整しなければならない。
ベトナムでは、2007年1月に越日の企業が連携して「ベトナム・日本ビジネスフォーラム」を発足させた。ここで、双方の経済界、ベトナム政府関連機関、在ベトナム日本大使館、ジェトロ、ジャイカ、ジェイペックと連携しながら企業のコミュニティに日越経済貿易関係の概要、投資の機会、投資促進等に関して効率的な情報提供をすることができた。
このフォーラムでは、ベトナム電子取引所というポータルサイトも公開、2008年6月~2009年6月まで約3000人の会員で3500の商品の取引ができ、3000の引き合いを紹介することができた。
2009年2月にハノイで公共事業に関する官民両セクター間のパートナーシップのセミナーも行い、2009年3月には、ジェトロと関西経済連合会のミッションを受入れ、ハノイでベトナム日本経済フォーラムを開催、ここにモノづくり、貿易システムコンサルティング、人材派遣等様々な分野のベトナム企業約200社と日本企業約100社の参加を得た。
また、グローバル企業のマネジメント、日本経済の発展過程と問題解決方法、環境保護、企業の社会的責任といったテーマで、日本の一流企業の専門家を講師にセミナーも開催している。今年11月にはベトナム企業のミッションが日本の生産管理システムの勉強のために来日予定である。
トヨタやパナソニックをはじめ多数の日本企業は独自の経営理念をもっている。これはベトナムの文化や価値観にとても近いと思われる。例えば、集団の意見を尊重し、上下または内外の秩序を保ち
ながら合理性を追求するという点、礼または信・義・智・仁を大事にする社会であるという点等である。
両国企業のダイナミズムを合わせて、両国国民の利益のため経済・貿易・文化・観光等幅広い関係緊密化を期待している。

2.各パネリストの発言
①パナソニック株式会社 代表取締役専務  大月 均氏(パワーポイント資料はこちら)
 パナソニックの事業規模は約8兆円、海外事業がほぼ半分を占め、それを米 国、 欧州、中国、アジアの4地域でほぼ等分している。アジアグループではシンガポール、マレーシア、タイ、インドネシアに続き、ベトナムが主要市場である。パナソニックがベトナムを重点市場とするのは、規模よりも成長性とその戦略性である。2007年以降2倍、1.5倍と成長し本年度も計画を上回る見込みである。
運営形態としては、パナソニック・ベトナムという統括会社のもとに4つの製造会社とソフトウェア開発のR&D会社、ベトナム国内向け販売・サービス会社の6社があり、出資総額約140億円、7000名を雇用している。
投資環境の評価と今までの成果をみると、まず、中国の台頭と経済環境の激変という点では、中国一点集中リスク回避のためベトナムへの展開を指向したが、双方とも所期の目標を上回っており○。 2番目に旺盛な国内需要の伸びで計画を上回る成果があり◎、良質な労働力である半面、中間管理職、経理・IT等の職能者不足、ストライキもあり○、地政学的メリットでは、東西回廊の活用がまだまだ不十分であり△、政府の外資導入促進・優遇策についてはこの2年で3倍の成果を上げるバックグラウンドになっており○、というところである。
今後の展望としては、更なる工場展開の為にもまず急速に伸びるベトナム市場で他社以上に売上を伸ばすこと、近隣諸国やグローバル市場の輸出基地にすること、それからワン・パナソニックとして6社のグループとしての総合力を最大限に発揮していくことである。
現地では、パナソニックの創業者 松下幸之助のDNAを受継ぎ、社会貢献活動でも頑張っている。
一つは、人材育成で、まず東南アジアの技術系学生への留学支援。2つのスカラシップがあり、ベトナムからは23名がその制度を利用し日本で修士を取得された。
また、「パナソニック講座」として技術部門の講師を派遣しハノイ大学でロボット工学のクラスを展開、加えて「モノづくり大学」としてハノイ工場の中で生産、製造技術の学校を開いている。
二つ目は、日本のODA活動への積極的な参画であり、ハイバントンネルが最大のものであり、その後も積極的にプロジェクト参画している。
環境経営にも積極的に取組んでおり、太陽光発電の活用、従業員による近隣地区清掃奉仕、更には植樹活動にも取組んでいる。
今後とも積極的な事業活動と経営の現地化を通じてベトナムの発展へのお手伝いができればと思っている。

②Vietnam-Japan Business Forum 理事長、Kinhbac City Group 会長、Saigon Invest Group 会長  
ダーン・チャン・タム氏
 ベトナムと日本の交流では、政治的関係よりも経済関係の方がより大きな成果を上げている。
ベトナム進出企業の2つの成功例が紹介されたが、これらの経営者の方々の期待にベトナムの人々が応えるように努力すれば、必ず成果は出ると思う。
ベトナム市場は9000万人弱であるが、その60%が30歳未満であり、消費と労働力両面で発展潜在力がある。
日本の大手の代表的企業はほとんどベトナムに進出しているので、次の課題と考えるのは、中小企業の進出である。
裾野産業、ニッチ産業、組立部品等の分野が参加することにより、既に進出している大手企業がより活動し易くなる。
北ベトナムで初めていわゆる裾野産業だけのための経済特区がつくられ、その経営が私達に任された。これも、日本の協力がなければ実現できない。
日本からの投資を期待する分野で、特に強調したいのはエネルギー部門である。これは日本の非常に優れている部門であり、是非来てほしい。
また、ベトナムでは手つかずの鉱物資源もあり、環境面で優れた日本の技術で開発に協力してほしい。
ベトナム人は、日本の製品だけでなく、日本人も文化も大好きで親しみをもっている。
私達のもとでは、大小合わせて20区を数える経済或いは工業特区があり、工業、農業、林業等多用な分野に対応でき、または大学や教育関係機関、人材養成等多種多様な要請に応える体制も整えられる。
私達は直接皆様の希望を聞きたいし、他の機関や、政府機関とコンタクトをとっていただいてもよい。まずは、皆様がベトナムへきていただくことが大切である。

③APEC経済委員会 議長  大守 隆氏(パワーポイント資料はこちら)
 3点述べたい。
1つは、両国経済の共通性と補完性、2つ目は、アジア太平洋経済の中での日越協力の意義とベトナムのビジネス環境について、最後に今後の協力のポイントである。
<共通性と補完性>
 共通性については、日本が遺したい(遺したかった)何かが息づいている。里山に象徴される豊かな自然との共生や信頼と恥の文化などである。猪口孝先生のアジアのソーシャル・キャピタルに関する調査では、ベトナムは中国に近いとされるが、「名と恥の文化」があるとする人もいる。この辺りを解明することが、ビジネス面での協力の上でも有効ではないか。
補完性については、①年齢構成面で、日本では中高年労働力に過剰感がある一方でベトナムは若くて優秀な労働力を持っている。②インフラに関して、日本では需要は減少するが、ベトナムでは都市交通をはじめインフラが発展制約要因となっている。法制度面でも日本のホワイトカラーの果たす役割がありそうであるし、金融インフラに関しても日本の地域密着型金融の伝統が役立つ部分があるのではないか。③裾野産業については、日本では中小企業の事業継承が困難という事情もある。
<アジア太平洋経済の中での両国経済>
 ベトナムはインドシナ半島の要衝に位置し、特に陸運については改善の余地が大きく、アジアの水平分業の中で重要な役割を果たすことが期待される。ASEAN内部の完全もいずれ撤廃される。
また、ベトナムはアメリカと並んでTPP(Trans-Pacific Strategic Partnership)という質の高い経済連携に関心があり、この地域の自由化に対するベトナムの積極性に留意する必要がある。
日本の地域統合への参加には2つの課題がある。一つは農業分野、一つは人の移動である。
農業分野については、日本は輸入国、ベトナムは輸出国であるが、共にアジア型農業であり、農業の非経済的価値に関する認識を共有する可能性が高い。来年秋にAPEC初の農業に関する大臣会合が新潟であるが、両国の果たす役割は大きい。人の移動についても、長期的にみて、日越間の交流が世論形成に大きな役割を果たす可能性がある。
ビジネス環境は、世界銀行が作成している「Ease of Doing Business」という指標によれば、ベトナムは中国と同程度で、インドネシア、フィリピンよりはよく、マレーシア、タイには及ばない。具体的な項目では、投資家保護、貿易面(日数がかかる)、事業閉鎖の面でかなり改善の余地がある。APECでは、APEC平均を改善すべく、こうした問題の解決に取組もうとしている。
<今後の協力のポイント>
 第一は、中小企業間の協力で、これはベトナムの裾野産業の発達にも役立つ。
第二は、人材育成で日本への留学生に対する様々なサポートや技術書の翻訳を通じた技術移転等。
第三は、日本の高齢化を背景に、健康リゾート開発や日本の介護需要への対応である。
第四は、両国の伝統産業の活性化で、観光資源としても開発の余地がある。
最後に農業であるが、ベトナムの農産物は質が高く衛生的で日本人の口にも合う。今回の経済協定にも、食品衛生や検疫体制の面での協力が含まれているが、日本への安定供給の面でも日越協力の可能性は大きい。

④早稲田大学 教授  トラン・ヴァン・トゥ氏(パワーポイント資料はこちら)
 工業化が急速に波及している東アジアで、ベトナムは最後発国として追い上げている。
しかし、「貿易自由化」と「中国の台頭」という2つの流れの中で、現在の後発国としての産業構造が固定化し、将来有望で潜在的に競争力がある産業を顕在化できなくなる可能性がある。このような現状打破のためにはベトナムは相当な努力をして短期間でそのような産業の国際競争力を強化する必要がある。
ベトナムの現在の比較優位は、繊維、アパレル、履物、木製品等労働集約的軽工業と農林水産加
工である。将来的には、私の分析の結果、自動車、二輪車、農業機械、家電など各種の機械工業やその部品、繊維産業や食料品加工産業の高付加価値化が有望である。
「貿易自由化」については、1996年にベトナムはASESN自由貿易地域(AFTA)に加盟、2006年まで関税率を5%以下、2017年までに0%にしなければならない。完全自由化まで後8年である。
また、ASEAN中国FTAでは、2015年までに対中国輸入の関税を撤廃しなければならない。後6年しかない。WTOについては、今後5年から7年で関税率を大幅削減することになるが、WTO加盟の効果よりも、ASEAN中国FTAやASEAN自由貿易地域のインパクトの方が大きい。
中国のインパクトとしては、91年にベトナムと中国が国交正常化し貿易が拡大してきたが、ベトナムの対中貿易収支は、赤字が大幅に拡大している。シンガポールやタイとの貿易もベトナムが赤字を記録している。中国やASEAN諸国から工業品の輸入が増加しているからである。AFTAやASEAN中国FTAの本格発効までの6年~10年間で、ベトナムは国際競争力を急速に強化しなければならない。
国際競争力強化のための一番の近道は、積極的な外資導入と各種の技術・ノウハウ移転である。そして中間管理層や技術者の人材養成、工業の発展を支える裾野産業の発展が重要である。
このようなベトナムの今後の課題に対して日本が協力する余地が大きい。日本の発展経験や日本の持つモノづくりの技術や精神、それから世界の市場を熟知し豊富な情を持つ総合商社の機能、
中小企業育成経験が非常に有用である。これらの経験・技術・ノウハウをベトナムに効果的に根付かせる方法を考えねばならない。                                          以上
                                            
3.コーディネーターのまとめ:社団法人日本経済研究センター特別顧問 小島 明氏
 昨年5月のリーマンショック以降世界が不景気に陥ったが、その根本原因は、世界の経済システムがアメリカ市場に過度に依存し、それが限界に来た、ということだと思う。日本で90年代に不良債権問題が起こった時、企業の過剰債務が問題で、そのバランスシートの調整に10年もかかった。アメリカ経済は調整過程にあり、消費不況は数年単位で続くという意見もある。
そうなると、世界経済にはアメリカ以外のエンジンも必要で、アジアが歴史的に注目される段階にきている。日本もしっかりとこの状況を見据え、政策や経営を考える必要があると実感した。
                                     
以上

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